人間には脅威と不安が必要です

LinuxがWindowsよりも劣っている分野は沢山あります。そのひとつがウイルスへの感染率です。

Linuxはウイルスへの感染率があまりにも低すぎて、あるいは全く感染しないために、Linux界にはアンチウイルス・ソフトウェアがほとんど存在しません。あってもLinuxの共有フォルダやサービスなどへアクセスしてくるWindowsのための対策ソフトウェアばかりなので、純粋なLinux用アンチウイルス・ソフトウェアとは言い難いものです。

どうすればWindowsのようにウイルスにかまってもらえるのか......Linuxユーザーは、多くのウイルス作者から愛されているWindowsに憧れの視線を向けているに違いありません。

Linuxが本質的にセキュアであるという見方が結構多いようですが、私は、Linuxが本質的にセキュアであるという意見には賛成しません。

Linuxがウイルスにかまってもらえないのは、OSレベルでのセキュリティーが格段に優れているからではなく、Linuxに感染するウイルスの絶対数が極端なまでに少ないからという理由が一番大きいと思っています。なぜなら最もセキュアなOSはWindowsであり、最もウイルスに感染しているOSもWindowsだからです。

ウイルス・プログラムの作者は主に3種類のタイプに分類できます。
  1. 自分の技術力を見せつけたい
    年齢的に若く、知的好奇心が旺盛で、熱心で、ひねくれたコンピュータプログラマーに多く、自分の作ったウイルスが世界中の多くのコンピュータに広まることで、自分には高い技術力があると感じるタイプです。彼らはセキュリティーの向上に貢献しているという達成感を得ます。
  2. 金銭や情報を摂取したい
    1で挙げた若者が成長し、組織化された中で雇われてウイルスを作成しているタイプです。ウイルス作成元として最も多いタイプであり、彼らは悪質なプロモーションやコマースのためにプロとして働きます。クライアントも彼らが悪質なプロモーターであることを知っている上で仕事を渡すケースが多いようです。ウイルスに感染させたコンピュータの利用権利をスパマーに販売するケースもあります。数年間働いた後、セキュリティー会社に転職するパターンもあります。
  3. 政治的なメッセージを送りたい
    他国の政策や歴史上のわだかまりに怒りを覚えている反対派であり、もっとも「攻撃」と呼ぶにふさわしいタイプです。彼らは正義のために敵国とみなしている国の政府機関のサーバーを攻撃します。目的は、真実を主張する事と、正義の制裁です。敵国と捉えている国の国民に向けたメッセージではなく、自国の国民を覚醒させたいといった意図が強く、彼らは英雄になった優越感を得ます。

2番目に挙げたタイプが最も活発であり、主要なウイルス作成元です。1番目と3番目に挙げたタイプから被害を被ることは、おそらく、Windowsにおいてもまず無いでしょう。もし、そういったタイプの人間から被害を受けたのであれば、大変希少な体験が出来たことに喜ぶべきです。ウイルスプログラムを保存してLUGで公開しましょう。きっと人気者になれます。

多くのコンピュータにウイルスを広めたい場合、Linuxはその妨げになります。Linuxにはさまざまなディストリビューションが存在し、ディストリビューションごとに環境にばらつきがあるため、セキュリティーホールの相互作用が難しく、Linuxはウイルスにとってフレンドリーな存在ではありません。

製品やサービスのプロモーションの対象として相手にされるには、まだまだデスクトップ用途でのLinuxのシェアが足りません。ウイルスやスパムから誘導しても購買に繋がりづらいユーザー層であることも要因のひとつでしょう。

政府関係のシステムにLinuxが多く採用されているので、政治的な攻撃を行うウイルスは無視できませんが、実際は、映画のように危機がせまるシーンは見られそうにありません。そこから一般のデスクトップPCに及ぶ影響もあまり現実的ではないでしょう。

本当に不公平なことですが、Linuxはウイルスから相手にされていないと認めるしかないようです。その点、Windowsは優等生です。比較的ばらつきの無い環境でリリースされており、同じセキュリティーホールを持ち、シェアも多く、インターネット上での商品購入も活発に行うユーザー層を持つために、Windowsはウイルスの最も良いパートナーになるのだと思います。

ただし、Linuxをサーバー用途で利用するのなら、少しは期待できますよ。
まず、手当たり次第たくさんサーバーを立ち上げて、不必要に通信ポートを開きましょう。それから、ソフトウェアのアップデートを止めましょう。ほとんどのウイルスはWindows用なので、Windowsのプログラムが動作しやすいようにWineやMonoをはじめWindowsの互換環境を整えましょう。サーバーにわざとセキュリティーホールを作ったり、システムファイルを改変可能なスクリプトを設置しておくと良いはずです。

それでも感染しないようなら、ウイルス付きのメールを受信したWindowsユーザーに頼んでウイルスをわけてもらいましょう。Windowsの互換環境を整えても、期待どおりに動作しないのなら、Linuxでも動くウイルスをLinuxシステムに詳しいプログラマーの人に作ってもらいましょう。

また、OpenOfficeなどのクロスプラットフォームのアプリケーションを狙ったウイルスも存在するので、うまくゆけばLinuxでもウイルスと遊べるかもしれません。

人間には脅威と不安が必要です。
脅威は新しい製品を産み、不安は市場を動かします。Linuxユーザーがウイルスを得たいのであれば、それなりの努力が必要です。

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